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オンライン採用時代、コロナ禍に新卒担当人事が意識すべき「一貫性」

グロービスとi-plugは2021年6月、オンライン化が進む昨今の新卒採用・新人育成をテーマに、オンラインセミナー「22年新卒採用を総括―オンライン採用から育成をつなげる一貫性」を開催した。第1部では、採用アナリストの谷出正直氏が、22年卒新卒採用の総括とともに、オンライン採用・育成で重要なポイントを整理する。


オンライン就活はさらに活況を呈すも、課題が顕在化

谷出正直氏(以下、敬称略):22卒採用を振り返ってみますと、大卒有効求人倍率は1.50倍でした(※1)、前年が1.53倍だったことも踏まえ、企業の採用意欲は底堅い状況です。学生は、就職内定率はコロナ前の20年卒と同じか、それより高い値で推移しています(※2)。

※1 【参考】リクルート 「大卒求人倍率調査(2022年卒)」 21年4月27日

※2 【参考】リクルート 「就職プロセス調査(2022年卒) 6月時点」 21年6月7日


では、コロナの影響はどこに表れたかというと、有効求人倍数や内定率ではなく、採用方法です。オンライン就活が当たり前になりました。

採用活動も就職活動もオンラインで効率化したメリットは大きく、今後も継続されると考えます。オンラインのおかげで、全国どこからでもエントリーでき、Uターン・Iターンも増えてきています。


一方で、これまであまり認識されていなかった課題が顕在化しはじめています。例えば、企業は、内定辞退や承諾後の辞退に、より不安を持つようになったのではないでしょうか。そうした新しい課題の背景と解決策が今日のお話のポイントになります。


その前に、まずオンラインによって学生側に起きた影響について整理していきます。

学生にとって1番のメリットは時間とお金が節約できることです。それまでは説明会に参加するために直接、企業に出向いていました。出向くことが当たり前だったわけです。人気企業の説明会は予約もとるのも大変でしたが、オンラインでは、会場の定員人数の制限がないため、自分が参加したいと思う説明会に参加することができるようになりました。また、現時点で興味が少なくても時間やお金をかけずに、気軽に参加できるオンラインでの説明会に参加しました。オンラインで十分、情報収集ができるようになったと学生は感じました。


その結果、学生は、企業に対して説明会などでも、直接、会うためには「理由」を求めるようになりました。人気企業や第一志望であれば、会いたい。それ以外の企業なら、理由がない限り行かない、という考えが学生に浸透してきました。


一方で、デメリットもあります。企業が不安なように、学生も漠然とした不安を抱いています。オンライン説明会では就活生同士が知り合う機会がなく、日常でもリモート授業で友達と情報交換をする機会もなくなりました。周囲と比較して適切な進捗なのか分からなくなっています。SNSやクチコミから情報終収集も行うものの、あまりに情報が多く、何が良いのか悪いのか分からなくなることで、更に不安を煽られています。

また就活生同士のみならず、社会人に直接会う機会等、社会を知る機会が減ったことも、学生にとってのオンライン化の更なるデメリットにもなっていると感じます。


コミュニケーションの希薄化が早期退職の要因にも


ここで各世代におけるオンライン就活の特徴を考えてみます。


まず20年卒、(今の社会人2年目)は入社直前にコロナ感染が急拡大しました。入社直前の内定者研修が中止になったり、入社式や新人研修がオンラインで実施されたり、配属後は完全にリモートワークが導入されたりしました。インターンシップを含む就職活動の時点では、対面が当たり前でした。また、売り手の採用環境でもあったので、就活が余裕であったり、やりたいことをやる!という想いで就活を進めていました。


次に21年卒、(今の社会人1年目)は就活開始の直前でコロナ感染が急拡大しました。説明会や選考が延期、中断されたり、コロナ禍で採用人数が減るんじゃないか、氷河期がくるんじゃないかと不安に思った世代。就活にも徐々にオンラインでの対応が増え、内定者フォローや研修の段階もオンライン対応を経験し、入社しています。


最後に22年卒は、大学3年生の学内での就職ガイダンス、学外でのインターンシップ合説などがオンライン化し、またインターンシップもオンラインインターンシップが初めて実施されるなど、就職活動のスタート時点からオンラインを活用しています。


コロナ禍になり1年超の間に、オンライン導入でどのような影響があったのか、いくつもの事例が出てきました。たとえば、これは私自身感じることですが、社会人2年目(20年卒入社組み)であってもまだ、学生のような「幼さ」が強く残る傾向があります。入社後からオンライン対応やリモートワークを行い、一人でいる時間も多い中、同期や先輩などに相談・質問がしづらかったり、今やっている仕事の全体像が見えず、タスクをこなしているだけということも影響しています。これがさまざまな問題を引き起こすといったことがあります。

今回はそうしたデメリットと言える部分を改めて整理し、オンラインを通じた採用と育成で気をつけるべき点を考えていきます。


「採用の本質」「オンラインの特徴」の両面から考える


結論を先に申し上げますと、オンラインを通じた採用と育成で大切なのは、「採用対象者を理解」し、「採用活動の本質」と「オンラインの特徴」の両面を踏まえたうえで、採用計画・育成計画を立てることです。これにあたり、また、コロナ禍においては自社の特徴や求める人物像、さらにはキャリアの再定義が大事になります。採用や育成に関しては、「採用活動の本質」と「オンラインの特徴」という両面から考えないとうまくいかないということです。


この結論について詳しく見ていく前に、改めて、そもそも採用活動とは何かを整理してみたいと思います。




採用活動を簡単に図解化したものになります。採用活動において、まず初めに、企業は学生にプロモーション(採用広報)をし、母集団をつくります。母集団に対して、説明会や選考を行い、内定を出します。その内定を承諾すると、内定承諾者となります。

では、そもそも説明会、選考、内定出し、あるいはその前の採用広報はなんのために行うのでしょうか。


説明会、選考、内定出し、あるいはその前の広報活動において、学生と企業は互いに何をしているのかというと、入社合意までに必要な「理解・魅力付け・見極め+人間関係の構築」を行います。

まずは互いの「理解」が必要であり、さらには一緒に働きたいという「魅力付け」、つまり志望動機の形成が行われ、そのうえで自分と合うか否かの「見極め」が行われます。そして、そうした一連の流れのなか中で「人間関係の構築」、つまり信用や信頼が形成され、そこでそれで初めて内定を出したとき入社合意となり「一緒に働きたいです。一緒に働きます。」となります。このどれか1つでも欠けていれば合意には至り承諾はされません。


人気企業や第一志望のような学生がその企業に入社したいと思っている企業は別ですが、一般的には、企業と学生が初対面で、企業が内定を出しても、学生は内定を承諾しません。内定を出すことに意味があるのではなく、内定を出すプロセスの中で、上記を共有することが大事になります。


では、「合う」「合わない」は何で判断されるのか。その基準はだいたい3つのマッチングに集約されます。価値観(カルチャー)と将来像(ビジョン)と能力(スキル)の3つのマッチングにおおよそ集約されます。「会社の雰囲気や価値観にはフィットしそうか」です。「会社の将来像やキャリアビジョンが学生のそれと一致するか」「学生の能力は企業が求めるものか(既存社員との能力差が大きくないか)」といったことを互いに見ていくわけですね。ですから、面接では学生の話を聞くだけでなく、企業からもこの上の3つに関する情報を伝え、学生に自身の価値観と合っているかどうかをジャッジしてもらうことが大切です。


採用活動でキャリアパスや育成計画を伝える必要も

では改めて、社会の変化で何が変わり、何を意識しなければいけなくなってきたのでしょうか。学生の就活視点で捉え直してみます。


学生は学校生活から社会生活へ移行するうえで就活を行います。この前提を踏まえ、私はこれまで学生に3つのことを話していました。

  • 自分の特徴を把握する(自己分析)
  • 企業の特徴を把握する(業界・企業・仕事研究など)
  • 就活の仕組みやルールを知る

しかし、現在はこれらに加え、仕事の意味や意義付け、さらにはキャリアの捉え方や生き方についても考えてもらう必要があります。例えば、今の学生は、自分の希望と異なる配属になったとき、キャリアについての知識がなければ、早期退職に思い至る可能性が高い世代です。「希望と違う配属でも、目の前のことを頑張るうちに自分の強みに気づき、力が発揮できる可能性もある」「実は、自分のやりたいことって、これまでに聞いて知っていたことに過ぎない。今度の配属は初めてなのでまずは挑戦してみて、いろんな視点を得てみよう」といった考え方を知っているかどうか、これが採用する側の企業にとっても重要になります。


そうしたキャリアの捉え方や「100年時代の生き方」といった話がなければ学生と企業、社会の間のズレは埋まりません。また、コロナ禍で変化の激しい時代だからこそ、学生もこういった話を聞きたいと思っています。企業もキャリアパスや育成計画、あるいは社員それぞれにとっての仕事のあり方まで伝える必要があるのではないでしょうか。


つまり、社会の前提が大きく変わってきているのです。これまでは、『良い大学を出て、良い会社に入り、出世し、定年まで働き、退職金をもらって、悠々自適」が「良い人生」だと言われてきました。しかし、今の若者にはそういった価値観では、ありません。加えて、転職も当たり前と考えていることを踏まえて、そうした変化をすり合わせながら採用活動をしないといけません。

社会の変化のみならず、コロナ禍によるオンライン化が与えた一番の違いは何か。それは「学校生活」と「社会生活」の違いを理解する機会とタイミングの減少や遅れです。




前提として、学校と社会でルールや仕組みが異なります。社会人にとってみれば、社会人生活と学生生活を比較して、当たり前のように把握していますが、学生にとっては、学生生活が全てなので、なかなかこのことを理解するのに時間や他者からの学びが必要になります。


今までは、就活の時に出会う人事や社会人から教えてもらったり、あるいは社会人になったばかりの1年目、先輩や同期とのやりとり、仕事を通じて、徐々に理解してきました。しかし、今はオンライン化で人との出会いが少なくなっていること、雑談の機会が減っていること、周囲の状況が見えにくくなっていることからも、学生視点のまま社会人になる場面が増えており、そのズレを修正するタイミングが中々ありません。


社会人になってからの教育で知ってもらうことを、今は採用場面から積極的に伝えていく必要があります。選考や育成のオンライン化で、そうした学びをなかなか得ることができないようになってきたのです。


特に『役割』の違いは早々に理解してもらいたい内容です(上記図参照)。消費者目線(自分中心の考え方)でいると、「自分はこれをしたいのに」という不満に傾いてしまいます。その目線を、生産者寄りへ持っていくために、今は採用場面から積極的に伝えていく必要があります。


こういった違いを理解してもらうための具体的な方法を考えていきます。たとえば、よく聞く「仕事の成果=能力×熱意×考え方」の「考え方」に当てはまるものは何かを就活生に考えてもらうのも1つのきっかけになります。「成果に考え方がそこまで影響するのか?」と、おそらく学生は疑問を抱く。だからこそ、どんな考え方の人が成果を出しているのか、内定者研修等で投げかけてみるのです。



入社後の活躍まで時間軸を延ばしコミュニケーションを

早期離職の要因としてよく挙がるのは、「仕事内容がイメージと違っていた」「やりたい仕事ができない」「希望の配属先ではない」などですが、これは就活時点、入社時点にこれらの点を理解させられなかったからとも言えます。「希望の配属先でないとき、それを自身のキャリアとしてどう捉えるか」という視点があれば問題ないのですが、そこで「やりたい仕事ができないことは、自分にとってよくないことだ」と捉えていることが1番の問題になっています。


ただ、こういった話を配属直前にしても納得してもらうことは困難です。伝えるタイミングとしては、説明会から内定を出すまでの間がベストです。ここで自社の仕事や配属がどのように決められているかを納得してもらったうえで、選考に進んでもらうようにするのです。


重要なことを伝えるために、さまざまなオンラインツールおよびコミュニケーション方法があります。たとえば資料を使って話をするだけでは伝わりにくいこともあるので、個別対応や動画制作、あるいは伝える前に、あえて自分で考えてもらうことで会社の思いを伝えるといったテクニックも使っていくと良いのではないでしょうか。


以上のように、現在は採用活動の初期段階から、入社後の定着・活躍まで時間軸を延ばした視野で情報を伝えていく必要があります。定着・活躍のフェーズに入ったから伝えるということでなく、採用活動の段階から伝え続けていくことが大事になります。これが、テーマにもある「一貫性を持たせた取り組み」であると考えています。


後編(グロービス知見録)に続く