スピーカー
採用コンサルタント/アナリスト 谷出 正直(たにで まさなお)氏
皆さんこんにちは。谷出と申します。よろしくお願いします。
僕は採用活動・就職活動を行っている企業さんや大学の就職課の皆さん、学生さん、メディアの皆さん、採用支援会社の皆さんたちが困っている問題を解決するということをやらせていただいています。
それらの活動を通じて「これは22年卒以降の特徴になる」と感じた部分があり、なぜそうなっているのかを今の採用環境・就職環境とあわせて考えてみました。そのなかで見えてきたものを、今日は皆さんにお伝えしたいなと思っています。
まず、21年の採用活動ですが、コロナの前と後で変化が起きています。
コロナの前は売り手市場が続いていて、就職活動や内定出しが早まっている採用環境でした。
変化が起こり始めたのは、コロナの感染が拡大し始めた2月のなかば。コロナ感染拡大防止のため、大手採用支援会社さんが合同企業説明会を中止したあたりから風向きが変わり、次第に「採用人数を減らす」という動きが見られるようになりました。その結果、売り手市場から通常の採用環境へと変化し、今は1.53倍の有効求人倍率に落ち着いています。
あわせて、採用活動が一時中断もしくは延期になり内定出しが遅れた、企業の採用活動でオンラインツールの活用が一気に広がった、というのが21年卒の採用で起こったできごとです。
今後の採用活動がどうなっていくのかというと、まず、有効求人倍率は1.53倍からさらに下がり、買い手市場の方向に進むだろうと考えられます。経団連の調査データなどでも、去年より採用人数を減らす動きが見られますので、22年卒の採用でコロナの影響が本格化すると予想できます。
次に、オンラインを使ったハイブリッドな採用活動の増加。同時に、採用活動の時期・選考・採用フローの多様化・自由化。自由化はすでに進んでいますが、今後はさらに自由になるのではないかと考えられます。選考活動が早くなった・遅くなったというのは基準があってこそだと思いますが、その基準がなくなっているので、各社「やりたいときにやる」というくらい自由な方向に進んでいます。
そのため、企業はあらためて、どういう人を採用したいのか、自社の特徴は何かなどを踏まえて、採用計画・育成計画を立てることが必要となります。
今後の採用活動では去年と同じやり方はもう通用しないのではないでしょうか。市場が売り手から買い手になっても、デジタル人材や理系人材の採用は激化しています。また、ジョブ型採用や通年採用が進んでも、優秀でスキルのある人材の採用は個別に動くという特徴がありますので、採用活動はほしい人材を獲得するための動き方と、いわゆる通常採用の動き方の2つに分かれると予想しています。
では、22年卒の採用活動(インターンシップ)はどうなっているのか。まず、変化としては、6月に始まっているインターンシップ実施企業数の減少が挙げられます。現在、大手の採用ナビサイト3社の掲載企業数は例年の約0.8倍です。夏・秋のインターンシップも減っています。
インターンシップの実施期間別で見ると、なかでも1day仕事体験を実施する企業数が減っています。唯一横ばいなのは2~3日のインターンシップ。全体的に減っているなか、ここだけ横ばいというのは一つの特徴ですね。「1dayで集めるだけではなく、ちゃんと会社のことを理解してほしい」という企業の想いが現れているともとれます。
そして、22年卒はオンラインインターンシップが始まったということも大きな変化です。
そのほか、通常は学内で行われていた就職ガイダンスや、各採用支援会社さんたちが実施しているインターンシップ合説(合同説明会)、就活支援イベントなどがほぼオンラインで開催されています。インターンシップに関する情報収集はオンラインで行われるようになってきました。
採用マーケットはこれまで「企業が動き方を変えた結果、学生の行動が変わる」という変化が目立っていました。これまでを例に挙げると、企業の採用活動が早期化することで学生の動きが早まり、内定率が高まるというような変化の仕方ですね。
実は、反対の「学生が動き方を変えた結果、企業は行動を変えて対応する」もあります。それが22年卒採用での重要なポイントになると感じています。
人は育つ環境や日々の行動の影響を受けます。最近、コロナ禍もあり、今の学生は、価値観や行動が変わってきています。そんななか、企業も変化していかなければ学生に反応してもらえない。企業が変わりたいかどうかというよりも、彼らの価値観・行動の変化に合わせて、企業も採用活動を変えなければならないという発想です。いまの学生がどういう状況にあるかをしっかりとつかむ必要があるのかなと考えています。
現在の就職活動の様子としては、知名度や規模よりも、将来性や成長の機会があるかという点が注目されるように変わっています。在宅勤務や副業の可否も企業選びのポイントです。コロナ禍の対応についても、「何をやったのか」「何のためにやったのか」という部分で企業の価値観を図るようになってきています。
そしてオンラインツールの活用。21年卒は就活の途中でオンラインツールの活用が始まりましたが、「22年卒は就活の最初からオンラインツールを使う」ということを大きな変化としてとらえておきたいですね。
こうした特徴を踏まえると、コロナの影響とオンラインツールの影響という2つの軸で考えないといけないと思います。
1つ目はコロナの影響。就活に対する不安が早く動き出すきっかけになり、活動量が増えるということです。実際に、オンラインを含めてインターンシップの参加を希望する学生は増えています。インターンシップを通じて企業研究ができるため、会社説明会の一環としてとらえられるようなるということですね。
2つ目はオンラインの影響。オンラインツールの活用によって、人気の低い企業はさらに注目されにくくなることが懸念されます。オンラインは興味がある情報を得やすい反面、興味がない情報をあえて調べるという行動は起こりにくいです。その結果、人気・不人気の差が大きくなると考えられます。
説明会がオンラインで開催されることによってキャパシティが広がりますので、今まで人気企業の説明会に参加できなかったのが参加できるようになる。選択肢が広がるので、選ばれる理由がないと選んでもらえないという状況ですね。
知名度がある、人気があるという企業にとっては問題ないですが、そうでない企業は、選んでもらうためのプロモーションをしないと難しいといえます。
オフラインの合同説明会には、たまたまの出会い、偶然の出会いがありましたが、それが今年はなくなっているというのが、22年卒における企業選びで大きな影響を与えているんじゃないかなと感じています。
22年卒以降を考えるにあたっては、まず採用対象となる学生が今どういう状況なのかを理解すること、「何をするのか」「何のために選考するのか」といった採用活動の本質を把握すること、そしてオンラインの特徴を踏まえて採用計画・育成計画を立てることが必要といえます。
これらに加えて、コロナ禍における自社の特徴の打ち出し方や、求める人物像の再定義も必要になります。働き方が変わると求める人物像も当然変わっていきますよね。22年卒の採用活動では、これらをあらためて考えるタイミングなのではないかと感じています。
次の第二部では登壇の方にもいろいろ聞いてみたいなと思っています。以上です。
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